治療用具・材料

  1. 創傷被覆材
  2. ケロイド・肥厚性瘢痕治療剤
  3. サイトカイン・増殖因子
  4. 体圧分散式マットレス

ケロイド・肥厚性瘢痕治療剤

ケロイドの治療に使われる薬剤としては、外用薬、注射薬と内服薬があります。

薬物療法 外用薬 副腎皮質ステロイドテープ
 デプロドンプロピオン酸エステルプラスター
 フルドロキシコルチドテープ
副腎皮質ステロイド軟膏/クリーム
非ステロイド系抗炎症(NSAIDs)軟膏/クリーム
ヘパリン類似物質軟膏/クリーム/ローション
注射薬 懸濁性副腎皮質ステロイド注射剤
内服薬 抗アレルギー剤(トラニラストなど)
抗炎症剤(柴苓湯など)

薬物以外の治療として、圧迫療法・手術療法・放射線療法などがあります。

・ケロイド・肥厚性瘢痕の発生メカニズム

TGF-β1の遊離・産生亢進

TGF-β1は各種炎症細胞から産生され、線維芽細胞の増殖およびコラーゲン合成などを促進し、上皮間葉転換やアポトーシス耐性などにも関与するケロイドの発生に関係する可能性のある成長因子です。

線維芽細胞・血管内皮細胞の増殖やコラーゲン合成促進

ケロイド・肥厚性瘢痕の形成には、真皮網状層で持続する慢性炎症が関与しています。この炎症により、膠原線維の合成促進・分解抑制による蓄積、と血管の増殖がおこります。その結果、ケロイド組織は硬くなり、皮膚にかかる力を逃がせなくなり、メカニカルストレスが更に炎症を惹起し、膠原線維の蓄積が繰り返される悪循環がおこります。

上皮間葉転換(EMT)の亢進

ケロイドで生じている慢性炎症により、上皮細胞が線維芽細胞などの間葉系細胞への変化することが知られています。TGF-β1は上皮間葉転換(EMT)を誘導する成長因子と考えられています。

ケロイド組織のアポトーシス耐性

ケロイドは腫瘍のような細胞増殖性疾患ではありません。病理学的には炎症であり、組織が過形成をおこしている線維増殖性疾患であると考えられています。ただし、ケロイド組織内の細胞は、アポトーシス(自然死)が生じにくい状態を呈している可能性があります。TGF-β1はケロイド組織のアポトーシス耐性の獲得にも関与するとされます。

ヒスタミン、PGE2、活性酸素の遊離・産生促進

ケロイド・肥厚性瘢痕組織には肥満細胞や炎症担当細胞が多く存在し、そこから産生・遊離されるヒスタミン,PGE2,活性酸素が瘙痒・疼痛などの自覚症状の増強に関与している可能性があります。

・ケロイド・肥厚性瘢痕の治療

ケロイドも肥厚性瘢痕も、鮮紅色ないし赤褐色の隆起した硬い腫瘤です。炎症が高度でなかなか治癒しないのがケロイド、炎症が軽度で時間とともに改善するのが肥厚性瘢痕と考えると良いでしょう。瘙痒感や圧迫痛といった症状の強さは、炎症の強さを反映しています。

今では、ほとんどのケロイド・肥厚性瘢痕は治療できるようになりました。ケロイド・肥厚性瘢痕は「炎症」であり、この「炎症」は種々のリスク因子によって悪化します。局所的な因子としては皮膚にかかる張力です。また全身的因子としては、妊娠や性ホルモン、また高血圧などが指摘されています。

よって、ケロイド・肥厚性瘢痕の治療は、「抗炎症」と「リスク因子の軽減」の両者が必要です。ケロイド・肥厚性瘢痕診断・治療指針2018に従って治療します。

抗炎症治療の代表は副腎皮質ステロイドテープ剤であり、成人に対してはデプロドンプロピオン酸エステルプラスターが第1選択として使用されます。副腎皮質ステロイドテープ剤にて改善を認めない場合は、手術および術後放射線治療も選択肢となります。これらは健康保険を適用して治療できます。

さらに補助療法として、内服薬やレーザー治療(保険適用外)やメイクアップ療法(保険適用外)などが行われることがあります。ざ瘡によるケロイド・肥厚性瘢痕では、ざ瘡治療と並行してケロイド・肥厚性瘢痕治療を行うことが大切です。

監修:小川 令
日本医科大学 形成外科 主任教授
特定非営利活動法人 創傷治癒センター 理事

  • 創傷ケア褥瘡の知識
  • 創傷ケア褥瘡の知識
  • 創傷ケア褥瘡の知識
  • 創傷ケア褥瘡の知識
  • 創傷ケア
  • 褥瘡の知識
  • 創傷ケア
  • 褥瘡の知識

side

ページトップに戻る

ページトップに戻る